台湾における終末期ケアとホスピスケア
―仏教的アプローチの視座と方途―
Buddhist Approaches to Dying and Hospice Care in Taiwan
台湾における臨床仏教(エンゲージドブディズム)。その特筆すべき点として、①仏教に即したホスピス医療ケアのあり方や、②患者の方とそのご家族、そして医療従事者へのスピリチュアル精神ケア分野における出家得度者への研修制度プログラム等が挙げられます。このような研修制度は、ヨーロッパやアメリカにおいて、かつてキリスト者が彼らの文化的背景のなかで進めてきたCPE(Clinical Pastoral Education/臨床牧会教育)プログラム運動を反映して今日まで受け継がれてきました。

しかしながら、アジアにおいては、仏教の文化・文脈に基づいたより自然な形でのアプローチが、終末期ケアやホスピスケアに求められてきたのも事実です。
1990年代中ごろ、陳榮基博士(Rong-chi Chen/国立台灣大学付属病院・元副院長)は、仏教に基づいた僧侶・尼僧のための研修プログラム推進のために、釋惠敏(Ven. Huimin/法鼓文理學院・校長)、陳慶餘 ( Ching-yu Chen/国立台灣大学付属病院・家庭医療科局長)の両氏を、国立台灣大学付属病院に招き入れます。そしてそれは、財団法人佛教蓮花ホスピスケア基金会(Buddhist Lotus Hospice Care Foundation)の支援のもと、過去20年間に、台湾全土において数百名にのぼる僧侶・尼僧が資格習得プログラムを終えてホスピスケアに従事するかたちで実りを迎えました。その後、研修修了生のなかには「コミュニティホスピスケアプログラム」と題し、年々増加する国家医療サービスの外にこぼれてしまう高齢者や患者の方々へのケアといった、高齢化社会が抱えるニーズに応えるようにプログラムを発展させる者もでてきています。
このように、台湾における臨床仏教の取り組みの一例は、寺院におけるサンガのメンバーが、彼らの所属する寺院の枠組みを超えて様々な「苦」に寄り添う可能性を示すことに他なりません。そしてそれは日本における臨床仏教や仏教的ケアの創設運動につながったように、アジア各国へと流布し始めています。
今回のシンポジウムでは、法鼓文理學院の釋惠敏を主催に迎え、台湾における僧侶・尼僧プログラム開始の発端を担った数々の創設者や指導者を迎えてトークセッションを行います。「死」に至るその瞬間への新たな仏教的視座と実践―一緒に見つめ、深めあいませんか。

プログラム:
13:30 開会挨拶ならびにイントロダクション
- 河野太通 (Rev. Taitsu Kono/花園大学学長、全日本仏教会会長)
- 陳榮基博士(Prof. Rong-chi Chen/国立台灣大学付属病院・元副院長)「台湾における仏教ホスピスケアの始まり」
13:50 パネリスト講演:
- 釋惠敏( Ven. Huimin/東京大学文学博士号取得、法鼓文理學院・校長)
「終末期ケアにおける仏教固有アプローチモデルの創設」
- 恆礎法師(Ven. Frances Lok/国立台灣大学付属病院・臨床仏教師研修プログラム主任)
「ホスピスケア分野における寺院・僧院研修」
- 陳慶餘( Dr. Ching-Yu Chen/国立台灣大学付属病院・家庭医療科、緩和ケア病棟局長、臨床佛教研究協会・理事長)
「台湾における仏教ホスピスケアに関するスピリチュアル諸問題」
- 宗惇法師( Ven. Tsung-Tueng /大悲學苑・園長) & 智慧法師(Ven. Zhihui/大悲學苑・講師)
「コミュニティホスピスケアと仏教寺院のあり方」
15:10 休憩
15:30 パネルディスカッション、質疑応答
16:00 閉会
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申込・問合せ:
ワッツ・ジョナサン(JNEB事務局)
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電話:080-8911-5114
