持続可能な「少欲知足」社会へ:背景と目的

福島から学び、エコ寺院地域社会を開発(かいほつ)

背景と目的

福島第一原子力発電所事故から3年以上経過した現在も危機的な状況が収束する兆しは見られない。今も原発反対が世論の大勢を占めている中で、安倍晋三首相率いる現自民党政権は、全国での原発の再稼働と特にアジア諸国への原子力技術の輸出を強引に推進し続けている。一方、日本の多くの企業が「グリーン・エコノミー」に経済的な機会を見出し、太陽光発電、風力発電など、公害を発生させない持続可能なエネルギー源の開発と利用促進に取り組みはじめている。

このような危機的な時代において日本の仏教界は徐々に反原発の姿勢を示すようになり、一部の教団や寺院が施設内にソーラー・パネルを設置するなど「少欲知足」(samtusti)という仏教的な価値観に根差した持続可能な生活様式に基づく脱原発社会を実現するために地域社会でリーダーシップを発揮し始めている。このように日本の仏教は、日本社会が歴史の岐路で方向転換して目指すべき持続可能な開発のモデルを確立するために、特に二つの役割を果たすことができると思われる。

まず、数十年来の過剰な産業・経済開発の下で荒廃しつつある日本社会の道徳的・文化的規範を再活性化させることが求められている。過去50年の間に日本の伝統的な地域共同体が崩壊し、自然環境が傷つき、心の苦しみが増していることは、様々な研究によっても明らかになっている。臨済宗妙心寺派管長、河野太通氏など、一部の仏教指導者は、こうした問題について公言し、日本社会における人々の繋がりを回復する上での仏教的な価値観や文化の重要性を唱えてこられた。草の根レベルの僧侶たちも、自らの檀家に限らず、広く市民社会で傷つき苦しんでいる人々の世話をしようとしている。特に福島県では僧侶たちが汚染した地域に留まって地域社会に奉仕し、人々の絆をつなごうとしておられる。

仏教者が果たし得る二つ目の役割は、地域の寺院という基盤を活かして持続可能な生活のあり方の主唱者となり、模範を示すことにあるだろう。現在、このような取り組みはまだ数少ないが、仏教寺院が資源の浪費や、環境負荷の少ない暮らし方について地域で啓発活動を行い、さらに重要なこととして、持続可能な生活に転換していくための地域での取り組みを創り出している特筆すべき例がいくつか見られる。「原子力行政を問い直す宗教者の会」の世話人でもある浄土宗僧侶の大河内秀人氏が東京の下町にある寿光院で行っている取り組みは、そのもっとも顕著な例の一つである。日本は全国各地に29万人の僧侶を擁する7万6千寺院がある。このような「エコ寺院」の具体的な運動を育成することは日本を環境面でも経済面でも持続可能な開発政策に転換させることに大きく貢献できるだろう。さらに、そのような運動は日本の経済・社会システムを中央集権的なものから自治と連携に基づく、より民主的なモデルに組み替えていく試みを後押しするだろう。仏教が日本の将来の開発モデルにそのように貢献する可能性については、早稲田大学の西川潤教授など経済開発学の重鎮たちも認めている。

上述したように、同じ問題意識を抱く仏教者と宗教者がこうした取り組みを発展させ、共有することには重要な意味がある。南・東南アジアの仏教者は、主に農村においてではあるが、精神的な価値観に基づく持続可能な開発のための目覚ましい運動をすでに展開している。一方、日本の仏教者は、開発途上国でも出現しつつある高度産業社会における経験と専門知識を共有できる。本事業の主催団体、International Network of Engaged Buddhists(INEB)は、仏教者だけでなく、他宗教の活動者、持続可能な開発に取り組む一般の市民団体とも二十年以上にわたってネットワークを構築して経験を積んできた。2012年9月にINEBは国際自然保護連合(IUCN)と協力してスリランカで第一回目の「気候変動と生物多様性保全に関する宗教間対話」を開催した。大河内氏も参加され、「エコ寺院」がネットワークを形成して経験やスキルを共有するモデルが提唱された。本提案は、その延長線上にあり、日本で持続可能な社会と文化を構築するだけでなく、アジア全域や西洋においても同様の変革を促すというビジョンを引き継ぐものである。

目的:

  • 外国の仏教者、宗教者、活動者、メディアにa)福島の現状とb)他の原発に影響を受けている地域を見学して頂き、日本の仏教者と宗教者によるc)脱原発運動と地域支援活動、d)再生可能エネルギーに関する取り組みから学んで頂く。
  • 実践的ワークショップでa)南アジアと東南アジアの仏教者の地域開発(かいほつ)活動の経験とb)日本の仏教者と宗教者の脱原発運動と地域再生エネルギー活動の経験をお互いにシェアして学び合う。
  • 環境に配慮した寺院や、それを核とした地域社会の優れた実践例をシェアし、行動するために国際エコ寺院ネットワークを作る。

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